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研究用原子炉の構造と性能

実用研究炉トリガII型

本研究所の研究用原子炉は TRIGA II型 と呼ばれる小型の教育・研究用原子炉です。TRIGAという名称は Training(訓練)、Research(研究)、Isotope production(放射性同位元素製造)とそれに製造会社General Atomics社の頭文字をつなぎ合わせたものです。

このトリガII型原子炉は、その優れた安全性に高い信頼が寄せられています。本体は、深さ約6.5m直径約2mの水槽の底に炉心を沈めた構造で、水槽に満たされている純水は冷却材であると同時に、遮蔽材も兼ねています。運転中でも炉心部を肉眼で観察できるのは、この原子炉の特徴です。水槽の周囲は厚さ1mを越える特殊コンクリートで作られ、充分な放射線の遮蔽と強度を保つ役割を果たしています。

燃料は、20%濃縮ウランと減速材としての水素化ジルコニウムとの合金で、ステンレスで被覆されています。この燃料は、突発的な核分裂反応の急増を効果的に抑制する性質を持っているので、原子炉が暴走する危険は全くありません。また、地震対策にも充分な配慮がなされています。震度4(中震)以上の地震で、原子炉は、安全保護装置の働きにより自動的に停止します。原子炉は、通常の建物の3倍の強度を有し、震度7を越える激震にも耐えることができます。原子炉出力も100kW(中央実験管での熱中性子束は、4×1012[n/cm2・sec])と手頃で、各種の付帯設備とともに、教育・研究用に最適な原子炉といえます。

原子炉が数kW以上になると、炉心を中心に青白い「原子の火」をプラットホーム上から見ることができます。これは「チェレンコフ放射線」と呼ばれ、水中の光の速度より速く電子が走るときに出す光です。

武蔵工大炉の炉心とチェレンコフ光の拡大写真


武蔵工大炉・縦断面図

年度別原子炉運転出力

原子炉の規格・性能

型式 トリガII型
最高熱出力 100 [kW]
冷却の方法  軽水の自然対流
熱中性子束(100[kW]) 中央実験管 4×1012[n・cm-2・s-1]
気送管 1×1012[n・cm-2・s-1]
照射溝 4×1012[n・cm-2・s-1]
照射室 1.3×1012[n・cm-2・s-1]
燃料装荷量 235U 約 3.1[kg]
燃料要素 直径: 3.75[cm]
長さ: 75.4[cm]
材料: ウランと水素化ジルコニウムの均質合金
(U: 8.4w/o, Zr: 90.0w/o, H:1.6w/o)
ウランの濃縮度 20 % 235U
被覆材 ステンレススチール
炉心 円柱型で有効直径、高さとも35.6[cm]、直径約 2[m]、深さ約 6.5[m]の軽水を満たしたアルミニウム製タンクの底部にある。
反射体 グラファイト
制御棒 炭化ホウ素棒3本
生体の遮蔽 普通コンクリート及び一部重コンクリートと水

※原子炉は現在、廃止措置中です。