所長室より
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ご挨拶


所長挨拶



   2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震と伴って発生した津波により、福島第一原子力発電所では炉心溶融などによる放射性物質を放出する原子力災害が発生し、10年が経過した。影響を受けた地域では復興が進められ、当該発電所では汚染水対策やデブリの回収に向けた長期の事故収束作業が継続している。しかし、原子力発電所の再稼働に関しては、社会との合意形成の難しさから遅々としている。一方、原子力に関する各種技術を身に着けた人材が継続して必要であることには変わりない。こうした状況の中、原子力研究所では、社会の動向にも敏感に反応できる原子力分野の専門家として、今後とも原子力・放射線教育研究や外部利用を含めた放射能測定の提供等の活動を継続していく。
   原子力研究所は1963年に初臨界となった研究用原子炉を用い、原子力の利用開発の基礎研究施設として日本でも類をみない全国大学の共同利用施設として、特色ある医療照射、放射化分析等の研究に使用され、1981年に開設された原子力専攻の院生等の研究教育、原子炉運転実習にも活用されてきた。しかし、1989年に原子炉タンクからの水漏れ事故が発生し、10数年の葛藤を経て、2004年には原子炉の廃止を決定した。その後、国に提出した廃止措置計画書(2019年度からホームページに掲載)に沿って、使用済燃料を米国に返還し、原子炉施設・設備の機能停止措置を終え、屋外に設置していた液体廃棄物処理場では機器や建屋等を撤去し、管理は原子炉室内のみに集中できるものとした。
   歴史ある原子炉施設は廃止措置中である特徴を生かし、整備を進めてきた放射性同位元素使用施設は放射化分析で培った分析技術を生かし、教育研究を行っており、また、新たな化学分離・物性評価技術の研究並びに1.7MVペレトロン・タンデム加速器の構築等を進めている。本加速器は2018年から稼働を開始しており、学内及び学内のユーザーをコンスタントに獲得してきている。今後もこれら施設・設備を学内外の教育・研究設備として、有効に活用して行きたい。
   本学においては、2009年度に原子力安全工学科、2010年度には共同原子力専攻を開設して、将来の原子力・放射線技術を担う人材育成を積極的に推し進めてきている。原子力研究所の教員はこれらの教育研究も行っている他、原子力研究所は学科・専攻の兼務教員を増やすなど、連携して、実験実習等の教育や教員及び学生・院生の研究の場として活用している。2020年はじめからわが国は新型コロナウイルス禍に見舞われ、その感染防止対策のため実験的研究の推進には困難が伴っているが、本所の教職員・学生が協力・工夫をしてこの難局を乗り越えようとしている。
   研究所報は原子力研究所のこうした教育、福島支援を含む各種研究活動の最新の成果並びに施設の保安管理活動の内容を総括したものである。関係者の皆様には、ご高覧をいただき、忌憚のないご意見を賜りたく、また、今後ともご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。

2021年11月
東京都市大学原子力研究所
所長 佐藤 勇


以上